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  年功序列の給与があった、ということで定年制は双方のバランスがとれた形だったとも言えます。ただ、能力主義や成果主義が出てきて、労働者としては60歳で一律定年というシステムは、合理性がなくなってきているとも言えます。
川口

そうなると可能かどうかは判リませんが、50歳・55歳で辞めていただくということもあるのかなという気がしますね。

寺崎 能力主義や成果主義を徹底していけば、55歳で会社の求める能力がないと判断されたり、65歳でもまだまだやれると判断されたりと出てきます。究極の能力主義・成果主義が発揮される段階では、定年制という概念がなくなり、毎年任期制や3年契約のようになりますよね。
川口 ただ現在の日本の法律は、解雇については厳しい条件や基準が設けられていますし、労働基準法も解雇できる条件が明文化されてきていますので、やはり労働者保護としては成果主義と言っても解雇は難しいのでしょうね。
寺崎 成果の評価方法が一律に決められないということもあり、成果主義がうまく発揮できていない。そうなってくると、年功の部分も含めて併用していかざるを得ないとなり、経済の活性化にもつながると考えられている長期の雇用の安定も必要かと思われます。
川口 ここ最近失業率も改善されつつあるというのを見ると、法律で解雇を禁止する、しないというより、経済的な政策がうまくいけば自然と雇用確保にもつながるのかなという感じがします。
寺崎 確かに、景気が上向けば、失業率は下がるということはありますが、ただその場合、いつでも切捨てられる可能性のある雇用ということになります。ニートやいわゆるキャリアを積めないフリーター達を今後どうしていくか。その方たちの所得の低さ・消費能力の低さが、経済に対してマイナス要因にもなっていきます。そうなると、会社の中である程度雇用を安定させてキャリアを積むというシステムを残しておかないと、一匹狼的な会社と距離を置いたプロいわゆる勝ち組は極少数でしかあり得ないので、大半の負け組と二極化した時に、果たして経済がどこまでうまくいくのか心配はあります。
川口 川口ちなみに寺崎先生は何歳くらいまで働くおつもりですか?
寺崎 70歳までです。士業は死ぬまで働くというマインドがあります。
川口 そうなると、今と70歳近くでは働き方など変わってくるのでしょうね。
寺崎 そうですね。基本的には、一つの事件に一人で携わっているので、長期化する事件は引き受けられなくなるかもしれませんね。
- 高齢者雇用について・法改正と定年を考える -
川口 話は変わりますが、最近会社が、退職した方からいろいろ請求されることが多いのですが、その中でも残業代不払いの請求というのもあります。まあ元々払っていなければならないものですから仕方ないですが。
寺崎 退職すると会社との関係が切れますので、在職中は請求しづらい雰囲気で言えなかった方が、退職後時効の2年間分はせめて払えと請求を起こしてくることはありますね。  
川口 これも最近問題になっていますが、自主退職後、退職金が払われていない時点で、在職中に会社で横領していたことが発覚した場合、会社側としては退職金を払いたくない。その場合、払わなければならないのか、払わなくていいのか、就業規則の定めによって異なったりと法的に結構争いがあるようですが、どのようにお考えですか?  
寺崎 懲戒解雇に相当する事由があったということですよね。その場合は、退職金を払わないということはできます。在職中に懲戒事由にあたる行為をすれば、退職金を払った後でも返還請求ということも可能です。ただ問題は「どういう場合に懲戒とするのか」という要件を明確にしておかなければならないということです。要件が不明確で、恣意的に懲戒にするということの方が問題です。
川口 特にある程度の規模の会社ですと、懲戒の手続も重要になってきますよね。
寺崎 そうですね。いわゆる告知聴聞というヒアリングを行っているか。一方的に会社側から通達するという形では、手続として適法かつ適正なものではないです。
川口 これまで特に中小企業では、先ほどの懲戒の要件を明確にするといったことはあまりしてなくて「この人はいい人だから今回は大目に見よう」といったこともあったかと思います。ただこれからは、基準を明確にして、それに則ってきっちり運営した方がいいような気がしますね。
寺崎 通常争いになるのが、会社側が懲戒解雇を主張した時に、労働者側が懲戒不相当として自分の地位もしくは退職金を求めるといったケースです。会社側も退職金の手当がたいへんなので払いたくないという方に振り子が振れてしまうと、ちょっとした非違行為を懲戒に持っていきたがるという傾向は出てきてしまいますね。特に小さい会社の方がありますね。
川口 退職金の原資確保の問題も出てくるので、難しいですね。
寺崎 退職金の性質を考えると、賃金の後払いということもあるので、簡単に切り捨てられるものではなく、本来会社側は積み立ててないといけないのですが。
川口 計画的な積み立ては必要ですが、なかなか現実中小企業では難しいところもありますよね。
 
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