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機関紙 KAWA-RA版 労務管理や社会保険に関する話題の情報を、
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第108号 令和2年11月1日

伴弁護士の法律の窓

【テーマ】

遺留分侵害請求と遺言書

【相談内容】

私には、推定相続人として長男、次男の2名がいます。今回、長男に私の財産全てを相続させる旨の遺言を作成したいと考えております。次男の遺留分を侵害することはわかっていますが、私としては、できる限り長男に迷惑をかけない方法で遺言書の作成をしたいと考えております。

【アドバイス】

1 質問者が亡くなった後、次男から長男に対する遺留分侵害請求権の行使がなされる可能性があります。相続法が改正され(令和元年7月1日以降の相続から適用)、遺留分権利者は、受遺者及び受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができるようになりました(新民法1046条1項)。これにより、例えば、遺産が会社の事業用不動産・非公開株式(いずれも評価額5000万円とします)等直ちに現金化することが難しい事案について問題が生じることが予想されます。長男が事業用不動産・株式と評価額1億円もの遺産を相続しても、次男に対し遺留分として2500万円を支払う必要があるからです。長男において2500万円の準備ができない場合、裁判所に対し、同金銭債務の全部又は一部の支払いにつき相当な期限の許与を求めることができるとされています(新民法1046条1項、同法1047条5項)。しかし、どの程度期限を設けてもらえるかはやってみなければ分からないのが実情です。
このように、遺留分侵害額によっては、長男がせっかく相続した事業用財産の売却が必要となり、かえって事業活動を縮小せざる得ない状況に陥ることもあり得ます。
そのため、十分な金融資産があるかどうか確認することも遺言書作成のポイントとなります。

2 金融資産が少ない場合には、次の方法が考えられます。
(1)推定相続人と将来について話し合いを行う方法です。良好な関係であれば、次男の遺留分の生前放棄や中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律の利用などにより、将来、長男に金銭債務を負担させない方法乃至負担させるにしても想定外な金額とならない方法を検討できるかもしれません。
(2)良好な関係にない場合でも、例えば、質問者から長男に対し生前贈与を行う方法が考えられます。
今回の改正により、遺留分算定の基礎財産につき、相続人に対する特別受益としての贈与の算入は、相続開始前の10年間と規定されました(新民法1044条1項、3項)。そのため、質問者が長男に生前贈与をした後、10年以上ご存命であれば、遺留分算定の基礎財産に含まれないことになります。ただし、遺留分権利者に損害を加えることを知ってされた贈与については、10年より前の贈与についても対象となるため、やはり遺産規模等を踏まえ慎重に検討をする必要があります。
(3)その他、次男にも遺産の一部を取得させる内容の遺言書を作成することが考えられます。例えば、長男が会社を引き継ぐ場合でも、全ての株式を長男に相続させる必要はありません。会社の意思決定に影響を与えない範囲内で次男に株式を相続させても、事業活動に影響がないからです。
そればかりか、次男の遺留分侵害額を抑えることができます。

3 このように、推定相続人間との関係、遺産規模等により遺言書作成のポイントが異なってきます。既に遺言書を作成している方も、今回の改正を踏まえ、今一度ご確認されますことおすすめします。

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