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機関紙 KAWA-RA版 労務管理や社会保険に関する話題の情報を、
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第109号 令和3年1月1日

伴弁護士の法律の窓

【テーマ】

残業請求の消滅時効期間の変更(法改正)

【質問】

残業代請求権の消滅時効の期間が変更になったと聞きました。どのように変わったのでしょうか?

【説明】

1. 1日8時間、週40時間を超える労働をさせる場合、原則として企業は労働基準法に従って残業代(時間外手当)を支払う必要があります。
この残業代も賃金の一部であることから、残業代請求権の消滅時効は、賃金債権の消滅時効に従います。
改正前の労働基準法は、退職金債権の消滅時効期間は5年、それ以外の賃金債権の消滅時効期間は2年と定めていました。そのため、残業代請求権の消滅時効は従来は2年でした。

2. 中小企業のなかには、残業代の計算・支給がきちんとできていない会社が多数あります。労働基準法において残業代を計算する場合の基礎となる賃金の範囲は広いため(原則として、給料、手当など名称を問わず、労働の対価として労働者に支払うすべてのものを指します)、残業代をきちんと支払っているつもりでも、計算が間違っていることがあるので注意が必要です。
従業員と企業の関係が良好な場合には、法的権利があっても従業員が未払い残業代の請求をしないことが多いですが、関係が悪化したときや退職したときに、過去に遡って残業代の計算をして未払い分の請求をしてくることがあります。
このような場合、従前は時効期間が2年だったため、裁判になっても過去2年に遡って支払をすれば済むのが原則でした。
しかし、新しい法律のもとでは、時効期間が3年に変更されたので、過去3年に遡って未払い残業代を支払う必要があります。計算期間がこれまでの1.5倍になるので、残業代請求にあたえる影響は非常に大きいです。

3. このような改正がなされたのは、同じく2020年4月に施行された改正民法が債権一般の消滅時効期間を原則として5年と定めたこととのバランスをとったものです。
ただし、いきなり2年から5年に時効期間を延長すると、実務に与える影響が大きすぎるため、当分の間は時効期間を3年とすることになりました。
この当分の間がいつまで続くのかは、はっきりとしていません。

4. なお、改正法は2020年4月1日以降に支払日が到来する賃金債権に適用されます。
そのため、実際に影響がでるのは2022年4月以降になり、2023年4月以降は残業代は過去3年に遡って支払をしなければならなくなります。
今一度、給与の支給方法をチェックし、残業代の未払いが発生していないか、注意をするとよいでしょう。

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