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機関紙 KAWA-RA版 労務管理や社会保険に関する話題の情報を、
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第124号 令和5年7月1日

年次有給休暇の権利性は極めて高い

新幹線の運転士が申請した年次有給休暇に対し、「事業の正常な運営を妨げる場合」として会社は取得日を変更しました。これに対し運転士が希望通り年次有給休暇を取得できなかったとして、同社に損害賠償を求めた訴訟の判決が、2023年3月27日東京地裁であり、裁判所は訴えを認め会社に54万円の支払いを命じました。

年次有給休暇に関するトラブルは年々増加しています。労働基準監督署が行った事業所に対する定期監督では、年次有給休暇に関する定めに違反した事業場数が前年の2倍に増加しています。

近年の法律改正によって、年次有給休暇を強制的に取得義務が、使用者に課せられたこともあり、従業員の年次有給休暇に対する意識も高まってきていると思われます。
そこで、改めて年次有給休暇についてQ&A形式でご案内させていただきます。

Q.労働者が請求してきた年次有給休暇の日が、忙しい時期であっても請求を認めなくてはならないか?
A.会社には請求された年次有給休暇の日を変更する「時季変更権」が認められていますが、裁判例等で極めて限定的にしか認められていません。したがいまして、多数の労働者が同時に請求してきた場合等でない限り、請求した日に与えなくてはならないと考えられます。

Q.30日後の退職を申し出た労働者が、退職日までは残った有給休暇を全て使い、出勤しないといっています、引継ぎに支障がある場合でも認めなくてはなりませんか?
A.会社には「時季変更権」がありますが、退職する労働者にこれを行使する余地はありませんので、労働者の請求を認めなくてはなりません。

Q.欠勤した労働者から、事後に欠勤を年次有給休暇扱いにしてほしいと言われました。年次有給休暇としなければなりませんか?
A.年次有給休暇は、事前に請求するのが原則ですので、従いましてこの欠勤を年次有給休暇とする義務は会社には課されていません。しかし、事後に請求されたものについて、会社が認めれば年次有給休暇扱いとしても構いません。

Q.年次有給休暇を取得したことをもって、賞与の査定でマイナス評価することは可能でしょうか?
A.年次有給休暇は、労働基準法で保障された正当な権利です。年次有給休暇をとることを賞与の査定でマイナス評価にされると、労働者にとっては、年次有給休暇の取得をためらうことにも成ります。年次有給休暇を取得する労働者に対し不利益取扱いは禁止されていることから、賞与の査定でマイナス評価はできません。

Q.付与された年次有給休暇権は、いつまで権利行使が可能でしょうか?
A.年次有給休暇の消滅時効は2年です。前年度の年次有給休暇の権利のみが繰越されます。

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