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機関紙 KAWA-RA版 労務管理や社会保険に関する話題の情報を、
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第126号 令和5年11月1日

「年収の壁・支援強化パッケージ」について

厚生労働省は令和5年10月から「年収の壁・支援強化パッケージ」を創設しました。今回創設された「年収の壁」への対策は、社会保険に関する対策となります。平成28年から段階的に社会保険の加入条件が拡大される中で、短時間労働者が「年収の壁」を意識せずとも働くことができる環境づくりを目的としています。

社会保険では、「106万円」と「130万円」という2つの年収の壁があります。
この年収の壁に対する企業の対策案が、「年収の壁・支援強化パッケージ」の対象になるか否かは、従業員数や週の所定労働時間により変わりますので整理してみていきましょう。

「106万円」の壁と「130万円」の壁

「106万円の壁」対応

①キャリアアップ助成金
短時間労働者の厚生年金や健康保険の新規加入に併せて、手取り収入を減らさない取組を実施する企業に対し、キャリアアップ助成金として労働者1人当たり最大50万円を支援する政策です。取り組みの具体例としては、新たな手当(例えば「社会保険適用促進手当」)の支給や、賃上げによる基本給の増額、所定労働時間の延長等とされています。
キャリアアップ助成金の申請に当たり、厚生労働省は「社会保険適用時処遇改善コース」を新設し、以下のメニューを設けており、要件を満たす事業主に対して助成金を支給します。

(1)手当等支給メニュー(手当等により収入を増加させる場合)
手当等支給メニュー(手当等により収入を増加させる場合)
(注)・助成額は中小企業の場合。大企業は3/4の額。
・①②の賃金は標準報酬月額及び標準賞与額、③の賃金は基本給。
・1、2年目は取組から6ヶ月毎に支給申請。3年目は6ヶ月後に支給申請。

(2)労働時間延長メニュー(労働時間延長を組み合わせる場合)
労働時間延長メニュー(労働時間延長を組み合わせる場合)
(注)・助成額は中小企業の場合。大企業は3/4の額。
・取組から6ヶ月後に支給申請。
・賃金は基本給

(3)併用メニュー
1年目に(1)の取組による助成(20万円)を受けた後、2年目に(2)の取組による助成(30万円)を受けることが可能。

本コースは、令和7年度末までに従業員を新たに社会保険加入させ、従業員の収入を増加させる取組を行う事業主に対して助成され、一事業所当たり申請の人数の上限はないとされています。

②社会保険適用促進手当
新たに社会保険加入となった従業員に対し、事業主が給与・賞与とは別に、手取り収入を減らさないために「社会保険適用促進手当」を支給した場合、その従業員の社会料負担分を上限として、最大2年間、標準報酬月額・標準賞与額の算定に考慮しない政策です。但し、本政策は新たに社会保険に加入する全従業員に対してではなく、標準報酬月額が10.4万円以下の者に限るとしています。
令和6年10月より従業員数51人以上で週20時間以上勤務する従業員に対して、社会保険の加入が拡大されるため、本政策は短時間労働者への社会保険料負担を考慮した政策ではないかと考えます。

今回開始された「106万円の壁」の対応は、従業員の負担軽減にはなるかもしれませんが、事業主の負担が気になる点ではあります。

「130万円の壁」対応

パート・アルバイトでは働く被扶養者について、毎年の被扶養者認定時に、一時的に年収が130万円以上となる場合に、人手不足による労働時間延長等に伴う一時的な収入変動である旨の事業主の証明を添付することで、継続して被扶養者認定を受けられます。但し、連続2回までが上限となります。
残業による収入増加が対象であり、賃上げや所定労働時間の延長による収入増加は対象とはなりませんのでご注意ください。

紙面ではご案内しきれない細かい要件もありますので、是非、厚生労働省のホームページも合せてご覧ください。

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