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機関紙 KAWA-RA版 労務管理や社会保険に関する話題の情報を、タイムリーにお届けする当事務所オリジナルの機関紙です。

第90号 平成29年11月6日

伴弁護士の法律の窓

減給処分が許される範囲

[相談内容]
当社従業員(月給30万円)は、以前より無断欠勤や遅刻があり何回か注意をしていたのですが、今月3回も無断欠席をしました。減給処分にすることは可能でしょうか。

[回答]
まず前提として、欠席した従業員の賃金を、その日数・時間分支払わないことは問題ありません(ノーワーク・ノーペイの原則)。それにとどまらず本来控除すべき金額を超えて制裁としての減給処分をすることができるのかというのがここでの問題です。

①就業規則への明記

まず、減給処分を含めた懲戒処分をするには、会社がどのような場合に減給処分を行えるのか、就業規則に明記をし、従業員に周知させることが必要となります。

就業規則の例
第○条(けん責、減給の制裁、出勤停止、降格の事由)
従業員が次のいずれかに該当するとき、情状に応じて、けん責、減給又は出勤停止とする。
(1)正当な理由なく無断欠勤をした場合
(2)正当な理由なくしばしば欠勤、遅刻、早退など勤務を怠ったとき

ただし就業規則に記載さえしていれば、どのような違反でも減給処分が許されるというものではありません。懲戒処分は違反の種類や内容に応じて相当なものでなければならないからです。ただし正当な理由のない無断欠勤は職場秩序を乱す程度が重いので、減給処分とすることは通常認められるものと考えられます。ただし、1回の無断欠勤だけで直ちに減給処分とすることについては慎重であるべきでしょう。

②金額の上限

減給処分ができる場合であっても、減給処分が許される金額には上限があります。
労働基準法91条は、減給の制裁を定める場合、①1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならず、②数回減給処分を行う場合、その総額が一賃金支払期の賃金の総額の10分の1を超えてはならないと規定しています。 「平均賃金の1日分の半額」は、原則として、事由発生前3ヶ月間の賃金総額(残業代・通勤手当も含む)を3ヶ月の歴日数で割って算出します。

③本件の検討

本件では月給が30万円なので、平均賃金は3ヶ月分の給料90万円(残業代がない場合)を、減給処分を下した日前3か月(直前の賃金締切日から起算)の暦日数(ここでは92日とします)で割った9782円(90万円÷92日)となります。したがって、1回の欠勤につき、減給額はその半額の4891円が上限となります。そして1回の無断欠勤について1回の減給処分ができる内容の就業規則であれば(上記の例の就業規則)、3回の無断欠勤に対し3回分の減給処分として1万4673円(4891円×3回)まで減給処分が可能です。しかし月給30万円の10分の1は3万円なので、仮に7回無断欠勤があったとしても3万4237円(4891円×7回)減額することはできず、減額は3万円が上限となります。

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