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機関紙 KAWA-RA版 労務管理や社会保険に関する話題の情報を、
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第98号 平成31年3月4日

伴弁護士の法律の窓

有給休暇の取得と退職金の減額について

[質問]
本日、弊社の従業員Aが、突然退職届を提出しました。同時に、退職までの期間全部につき、未消化であった有給休暇を使うと主張して、帰宅してしまいました。弊社としては身勝手なAの行為は非常に迷惑ですので、有給休暇の取得を認めたくありません。
また、Aに対して、退職金を減額する措置を取りたいとも思います。何か問題がありますか。

[回答]

  1. 有給休暇取得の拒否について
    まず、労働者(従業員)が有給休暇を取得する権利(年休権)は、労働基準法によって、従業員に当然に付与される権利です。
    しかも、従業員から年休取得の時季の指定があれば、使用者の承認がなくともその指定された時季に年休が成立します。
    年休を請求された使用者としては、「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる」という例外的な場合に限り、年休の時季変更権を行使して対抗できるに過ぎません。
    もっとも、Aさんのように、退職する従業員が退職日までの期間に相当する年休を一括で申請することがあります。この場合は、もはや使用者が時季変更権を行使する余地もありません。
    したがって、貴社としては、Aさんが退職日までの期間につき有給休暇を一括取得することは、認めざるを得ません。

  2. 退職金の減額について
    次に、貴社が、Aさんのような退職の方法を選択した従業員に対し、退職金の減額という措置を取れるか否かが問題となります。
    しかし、前述のとおり有給休暇の取得は従業員の権利として法律上認められる行為であるため、たとえ使用者にとって迷惑な有給取得であっても、それを根拠に不利益に取り扱うことは原則として認められません。仮に退職金の減額が認められるとすれば、年休の一括取得による事実上の引き継ぎ拒否が、従業員の在職中の功労を帳消しにしてしまうほどの重大な背信行為といえるような、極めて例外的な場合に限られるでしょう。
    したがって、貴社のAさんに対する退職金の減額も、原則として認められないと考えるべきです。それにもかかわらず一方的に減額してしまうと、より大きなトラブルに発展しかねませんので、減額をご希望の場合は、専門家にご相談ください。

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