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機関紙 KAWA-RA版 労務管理や社会保険に関する話題の情報を、
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第100号 令和元年7月1日

伴弁護士の法律の窓

2020年4月から消滅時効の制度が変わります!

[本文]

2020年4月1日から施行される改正民法によって消滅時効の制度が変わります。取引先に対する売掛金や貸金をうっかりと時効消滅させてしまわないためにも、事業を営むうえで消滅時効制度の概要を知っていることが重要です。
消滅時効とは、権利を行使しないで放置していると、権利が時効により消滅してしまう制度です。
改正前の民法(現時点で効力のある民法)では、債権は権利を行使することができるときから10年で時効が完成すると規定されています。しかし、時効期間について職業別の特則があり、たとえば飲食店の飲食料は1年、小売商の売買代金は2年、工事請負契約に基づく工事代金は3年の時効期間とされており、どの債権がどの期間で時効になるのか分かりづらい規定となっていました。
そこで、改正民法は、時効期間を統一し、次の①または②のいずれか早い方の経過によって時効が完成すると規定しました(ただし、不法行為による損害賠償請求権、給料債権など、特別の定めがある場合があります)。

[改正民法の定める時効期間]
  1. 権利を行使することができることを知った時から5年
  2. 権利を行使することができる時から10年

それでは①の「権利を行使することができることを知った時」と②の「権利を行使することができる時」とは何が違うのでしょうか。例を出して説明すると、例えば、多数の商品を目的とする売買をした場合で、売主が代金の計算を間違えて過大な請求をし、買主が気がつかずに払ってしまったとします。計算間違いによる過大な支払いなので、当然、買主は売主に過払い分の返還を請求できるのですが、過大な代金を支払ったときから直ちに返還請求をする権利があるので、②の「権利を行使することができる時」は過大な代金を支払った時ということになります。そして、①の「権利を行使することができることを知った時」は計算間違いがあったこと買主が知った時です。しかし、事案によってはいつから①、②の期間を起算するのか明確でない場合が多く、その場合には裁判所が個別の事情を考慮して判断していくことになります。
ただし、取引によって発生する売掛金債権は、権利者が弁済期に権利を行使できることを知っているのが普通で、①と②の時点は一致します。したがって改正民法のもとでは債権は通常5年で時効消滅すると考えていた方がよいでしょう。
消滅時効を完成させないためには、相手に債務を承認させたり、裁判手続をして判決を取得するなどの方法があり、この場合、時効が更新されます(時効期間がリセットされ、そこから時効期間があらためて進行します)。
単に請求書を送るなどの催告では時効は更新されませんが、時効完成の手前で催告を行うと催告から6か月間、時効の完成が猶予されます。しかし、その猶予期間中に時効を更新(時効期間をリセット)するための裁判手続などが必要になります。催告は繰り返すことができないので、定期的に催告を続けても、消滅時効が完成してしまうので注意が必要です。
なお、改正民法が施行される前に生じた債権については、改正前の民法に従って時効期間が起算されることになります。

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