本文へジャンプ

機関紙 KAWA-RA版 労務管理や社会保険に関する話題の情報を、
タイムリーにお届けする当事務所オリジナルの機関紙です。

第115号 令和4年1月1日

伴弁護士の法律の窓

【テーマ】

賃料不払い

【質問】

新型コロナウイルスの影響により売上が減少し、月々の賃料支払が難しくなってきました。1か月でも支払が遅れれば退去しなければならないのでしょうか。

【回答】

1 賃借人が賃料の支払が滞った場合、賃貸人は賃借人に対し、相当の期間を定めて未払賃料を支払うよう催告し、その期間内に支払がない場合、賃貸人は賃貸借契約を解除することができると規定されています(民法541条)。
しかし、判例上、賃貸借契約は賃貸人と賃借人との間の信頼関係を基礎とする継続的な契約関係であることから、賃借人に賃料の不払いがあっても、信頼関係が破壊されていない場合には、賃貸借契約の解除が認められないとされています。そして、賃料未払における信頼関係破壊の判断方法については、賃料の滞納期間、滞納に至った理由、過去の賃料支払状況、賃借人の支払意思、賃貸人の支払催告後の対応等、総合的に考慮し判断することになります。
なお、賃料の支払は、賃借人にとって賃貸借契約の中核をなす義務ですので、滞納期間が長期になればなるほど、それだけで信頼関係破壊が比較的容易に判断される傾向があるといえます。

2 本件でいえば、1か月の賃料不払いの事実をもって、賃貸借契約の解除となることはないといえるでしょう。しかし、過去に繰り返し滞納していた事実や、新型コロナウイルスの影響とはいえ、今後も売上の目処が経たずに賃料支払が確約できないなどの状況によっては、信頼関係破壊との判断がなされる可能性もありうるところです。
賃借人としては、今後どのような条件であれば賃料の支払が可能なのかシミュレーションをして、賃貸人と協議することが重要といえます。なぜなら、所有物件の固定資産税、ローン返済などの負担から、減額してでも賃料の支払を受けたいと考える賃貸人がいるので、場合によっては、一定期間賃料減額の合意、差し入れている保証金からの清算等、柔軟な解決ができるかもしれないからです。
他にも持続化給付金などコロナ関連の助成金・給付金、新型コロナウイルス感染症特別貸付などを利用し、支払対応が可能となるかもしれません。

3 新型コロナウイルスという賃借人の責任とは言えない事情があるにせよ、賃料の支払を免れることにはなりません。今後の支払が困難と考えるのであれば、専門家の意見を踏まえた上、至急賃貸人と協議することをお勧めします。

ページ先頭に戻る

機関紙 KAWA-RA版

社会保険労務士法人ご案内
東京事務所
〒104-0032
東京都中央区八丁堀4-2-1
東京リアル宝町ビル5F
TEL:03-3551-6311
FAX:03-3551-6312
横浜事務所
〒231-0012
横浜市中区相生町6-104-2
横浜相生町ビル10F
TEL:045-210-9260
FAX:045-210-9261

SRC 認証番号080473

川口社会保険労務士法人ブログ