
【テーマ】
休憩時間と労働時間
【質問】
当社では、12時から13時の1時間を休憩時間としています。昨今の人手不足もあり、休憩時間中も電話が掛かっていた時には対応をお願いしています。休憩時間といっても電話が長くなることは稀ですし、掛かって来ない日もあるので問題ありませんよね?
【回答】
休憩時間ではなく、労働時間に該当するため、休憩を与えたことになりません。
【説明】
1 休憩時間・労働時間とは
厚生労働省の通達(「基発」と言われています。)にて、休憩時間とは単に作業に従事しない手持時間を含まず、労働者が権利として労働から離れることを保障されて居る時間をいいます(基発17号)。
手持時間とは、現に作業を行っていないが、使用者の指示があればすぐに作業に取りかからなければならない時間をいいます。具体例として、飲食店での客がいない時間があげられます。客が来店すれば接客等の作業を行わなければならないことから、手持時間は労働から離れた時間とはいえず、休憩時間ではなく、労働時間に該当します。
一方で労働時間とは、最高裁判所の判例によると使用者の指揮命令下に置かれている時間をいいます。労働時間に該当するかの判断については、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれているかという基準で判断されます。
2 休憩時間の確保
労働基準法に規定があり、労働時間が6時間を超える場合には少なくとも45分、8時間を超える場合には少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならないとされています。
労働時間の途中と規定されていますので、労働時間の前や終了後に与えることは認められませんが、途中であればどの時間でも良いとされています。1時間の休憩を与える際に、45分と15分のように分割して休憩を与えることもできます。
そして、使用者は休憩時間を自由に利用させなければならないと労働基準法に記載があります。労働者の指揮監督下から離れた自由な時間であることが必要です。
3 休憩時間の一斉付与
休憩時間は事業の性質上一斉の休憩が必要とされていない事業を除き、原則一斉に与えなければなりません。
例外として、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、例外的に一斉の休暇を与えないことができます。
4 【質問】の検討
【質問】の場合、使用者から従業員に対し、電話の対応をお願いしておりますので、電話の有無にかかわらず、使用者の指揮命令下にあるといえ、労働時間に該当します。電話の対応を求められていることからすると、労働者の指揮監督下から離れた自由な時間とはいえません。したがって、休憩時間を与えたとはいえません。
原則、一斉に休憩時間を与えなければならないとされている性質上、どうしても電話への対応が必要な場合には、労働組合で協定を作成し、一斉休憩をしない等の対応をする必要があります。
休憩時間でも、従業員の方から自発的に電話対応をすることもありますが、ついつい従業員の好意に甘え、あたりまえのように休憩時間でも電話対応をお願いしないように注意しましょう。