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機関紙 KAWA-RA版 労務管理や社会保険に関する話題の情報を、
タイムリーにお届けする当事務所オリジナルの機関紙です。

第106号 令和2年7月1日

伴弁護士の法律の窓

【相談内容】

私が代表取締役をしているA社には返済の見通しが立たない多額の借金があり、私は連帯保証をしています。私が亡くなったら会社を閉じて、妻には相続放棄をしてもらい、死亡保険金で生活してもらいたいと考えています。注意すべき点があれば教えて下さい。

【アドバイス】

あなたが亡くなった場合、相続人である奥様はあなたの資産だけでなく負債も相続してしまいます。しかし、奥様が相続開始を知ったときから3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をすることで、債務を承継しないで済みます。ただし、奥様が相続放棄をした場合、あなたの資産を相続することができなくなるため、死亡保険金を受け取ることができるのかが問題になります。
この点、相続税の計算において死亡保険金は「みなし相続財産」として課税の対象となります。しかし、民法上は、死亡保険金は被相続人が亡くなることではじめて受取人のもとに発生する受取人固有の財産であることから(別の言い方をすると、死亡保険金は被相続人から相続人に承継される財産ではないことから)、相続財産ではないものとされています。そのため、相続放棄をした相続人(奥様)も、死亡保険金を受け取ることができます。
しかし、保険契約者がA社で、受取人がA社となっている保険契約の場合には注意が必要です。もしA社の株式を100%あなたが保有している場合、株式は相続財産になるため、奥様は相続放棄をすると株式を相続できなくなります。保険会社に対し死亡保険金を請求するためには、あなたに代わるA社の後任の代表取締役を選任する必要がありますが、取締役会設置会社でない会社の場合、代表取締役の選任には原則として株主総会決議が必要です。この場合、奥様は株式を相続しないので、株主として代表取締役を選任することができず、生命保険会社に死亡保険金を請求できるA社の代表取締役をいつまでも選任できないという事態になりかねません。
一方、取締役会設置会社の場合、取締役会の決議により残された取締役の中から後任の代表取締役を選任できることがあります。しかし、死亡保険金は会社に支払われるため、これを奥様に死亡退職金として支払うために原則として株主総会決議が必要になります。そうすると、あなたが100%株主の場合、相続放棄をした奥様は株主になれず、株主総会決議ができないので、A社に払われた死亡保険金をスムーズに奥様に渡すことができなくなります。
死亡保険金の受取人が会社となっている場合、上記のような事態をさけるため、株式を生前に奥様に譲渡しておくとよいでしょう。

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