
【テーマ】
電車での帰宅が困難となった従業員からのタクシー代の請求
【質問】
台風の影響で電車が止まった結果、普段電車で通勤している社員が帰宅困難になりました。結果的に、当該社員はタクシーを利用して帰宅しましたが、会社は当該社員からの請求に応じてタクシー代を支給しなければなりませんか?
【回答】
就業規則や賃金規定等に支給することが定められている場合は支給しなければなりませんが、定めがない場合は原則として会社がタクシー代を支給する必要はありません。
【解説】
1 通常の通勤費
労働者は、会社に対して、労務を提供する義務を負っているため、日々の出勤・帰宅に要する交通費(通常の通勤費)は、労務を提供するために必要な費用として、労働者が負担するのが原則です。
しかし、多くの企業においては、就業規則や賃金規程等の定めによって会社が通常の通勤費を通勤手当として支給し、通常の交通費については会社が負担している場合が多いのが実態です。
2 特別の交通費
(1)天候の影響で電車が止まり帰宅が出来なくなった場合にタクシーを使用して帰宅する際に要した費用は、上記の通常の通勤費と異なり、特別に必要になった交通費といえます。
このような特別な交通費についても、就業規則や賃金規程等に支給することが定められている場合には、従業員は会社に対して当該交通費の請求をすることができます。他方、そのような定めがなければ、従業員は会社に対して当該交通費を請求することはできません。
(2)例外的事情
仮に就業規則や賃金規程等に特別の交通費を支給する定めがなかったとしても、過去において、長期間にわたり特別の交通費を従業員の請求に応じて支給してきた実績がある場合は、注意が必要です。
過去の長期間にわたる支給実績がある場合、特別の交通費を支給することが、労使慣行として労働契約の内容となっている可能性があるためです。そのような場合、従業員は、労使慣行に基づき、例外的に、特別の交通費を請求することができます。
3 具体的検討
天候の影響で電車が止まり、電車での帰宅が困難になった従業員が帰宅するためにタクシーを使用した場合、タクシー代は特別の交通費ということになりますが、就業規則や賃金規程等に会社が特別の交通費を支給することを定めていれば、会社は請求に応じてタクシー代を支給しなければならず、そのような定めがなければ、従業員は会社に請求することができないのが原則です。
しかし、そのような定めがなかったとしても、会社が過去に従業員からの請求に応じて、特別の交通費を長期間支給してきた実績がある場合には、例外的に会社がタクシー代を支給すべきことになるため、注意が必要です。